感情労働のストレスから社員を守るためには

労働とは、スキルや経験を活かして社会貢献したり、会社の利益向上に寄与したりなど、社員全員で結果を出すものです。よって、社員が気持ちよく充実した仕事ができる環境を提供するのは、会社の役目と言えるでしょう。

ストレス社会と言われている昨今、感情労働に対する健康管理が注目されています。感情労働とは何か？メンタルの健康管理のコツや対策・フォロー方法などを詳しくまとめました。

感情労働とは労働ジャンルの1つ

働いてお金を得ることを「労働」とひとくくりにしていますが、労働は大きく3つにジャンル分けされます。

1. 肉体労働
2. 頭脳労働
3. 感情労働

肉体労働は身体を動かす作業ワークのことです。体力勝負の仕事で、建設業や工場での作業をイメージするとわかりやすいでしょう。

頭脳労働は頭を使う作業ワークのこと。事務作業などのデスクワークはもちろん、企画・立案など知識や経験を元にアイデアを出す仕事も含まれます。

感情労働は自分の感情を抑制し、コントロールしながら作業する仕事です。自分の意思や行動とは反する仕事もあるので、ストレスが溜まりやすいと言われています。

感情労働にジャンル分けされる主な職種

感情労働に該当する職種は、数多くあります。

• カスタマーサポート
• コールセンター
• 接客サービス業
• 教師
• 企業広報など

顧客と直接関わる職種をイメージするとわかりやすいでしょう。肉体労働や頭脳労働よりも職種が幅広く、身近な職種が多い点が特徴です。

これらの職種は「かに顧客を満足させるか？」がポイントとなるため、自分の意思を抑えながら仕事をしなければなりません。

感情労働の一例

仕事において自分の感情をコントロールしなくてはいけない場面事例を紹介します。

1. 保証期間対象外の商品を交換してほしいとコールセンターに問い合わせがあり、対応できない旨を説明したが、クレームに発展。「できないものはできない」とはっき言いたい気持ちを抑えて、複雑なシステムを謝罪し、丁寧に説明しながら、理解してもらう。
2. スーパーで野菜を買い、家で調理しようとしたら表からは確認できない中心部に直径1mmの小さな虫食いを発見したとのクレームが。交換してほしいと依頼があり謝罪。交換するものの15分ほど嫌味を言われ続ける。

顧客満足度を下げないように、対応スタッフは個人的感情を出せない状況。このような仕事はストレスが溜まりやすい傾向にあります。

感情労働は自分の意思ではなく、顧客要望を優先する対応が重要視される仕事とも言えます。心理的負担の大きい職種だからこそ、従業員のメンタル管理の必要性が高まっているのです。

感情労働が原因と考えられる問題や病気

精神的負荷が大きい感情労働が続いた場合、どのような問題点や病気につながるかを調査しました。

燃え尽き症候群になりやすい（バーンアウト）

燃え尽き症候群とは、精神的なストレスや何度も繰り返される苦労と疲労が原因で、虚無感におそわれる病気。次のような状態が継続して起こると言われています。

• 熱意を持って対応していた仕事が完了。やる気の行き場がなくなって立ち直れない
• 頑張っても報われる感覚が得られず、理想を追いかけて行動することに意義が見いだせなくなる
• 日常生活においても、何に対しても関心を持てなくなる

仕事だけでなくプライベートにおいてもやる気がなくなるため、うつ病と混同されやすい状態です。

ストレスの回復が遅い

肉体労働は適切な食事と休息で回復可能。頭脳労働は睡眠で脳を休ませたり糖分を摂取したり、リフレッシュしやすい仕事です。しかし、感情労働は自ら感情をコントロールするため切り替えしにくく、肉体労働や頭脳労働のように気分を切り替えることが難しく、回復が遅いと言われています。回復したかのように見えてカラ元気なこともあり、回復状況が判断しにくいのがさらに回復を遅らせる原因にも。メンタル面の健康管理をうまくコントロールできない場合、うつを引き起こしたり自律神経を乱したりなど、長期的な病気に繋がる可能性があるとされています。

仕事への意欲や満足度が低下する

感情労働において、仕事に従事している時間の多くはストレス源となる可能性があります。クレーム対応がその場で終わらず何日も長引いた場合、ふとした瞬間に仕事のことが思い出されるでしょう。そんなときは体は休んでいても脳が活発に仕事をしている状態。睡眠時間が短くなったりネガティブ感情を抱き仕事意欲が低下したりなど、常にマイナス要因のそばにいる状態が続きます。その結果、仕事の満足度が極端に低くなることもあるのです。

感情労働のメンタル健康管理対策

感情労働は、いかにメンタル面の健康管理体制を充実できるか？がポイントです。従業員が気持ちよく働ける環境をつくるために、企業ができる対策をまとめました。

数値的にストレスレベルを把握する

ストレスは目に見えないものです。個人差があるため自分の基準ではなく、従業員にとってどのレベルのストレスなのか？を数値で把握しましょう。

ストレスチェックでは、従業員がどのくらいのストレスを抱えているのか？をパーセンテージで確認できます。数値で危険度を判断し、医療機関の受診や仕事のフォローができるように環境を整えましょう。適切にフォローできないと、突然出社できなくなったり仕事を辞めたりなど、トラブルに発展することもあります。

コミュニケーションを取る

従業員が悩みを抱え込まないように、普段から相談しやすい環境を作るためにコミュニケーションを積極的に取りましょう。業務上の不安をケアするのはもちろん、プライベートな話をしたり本音が言えるような信頼関係を築けるのが理想的です。指摘や指導ばかりではなく、従業員の気持ちに寄り添った会話ができるように心がけると良いとされています。

部下ばかりではなく管理層にも目を配る

現場で働く部下だけでなく、部下を直接指導する役職や管理層にも目を配りましょう。フォローやケアは、どうしても新人や現場で働く従業員に集中しがちです。「自分は相談される側だから」と、自らの悩み解決が後回しになりがちな中堅社員も少なからずいます。

誰かに評価されると、仕事のモチベーション維持にとても効果的です。会社全体でコミュニケーションを取り、細かくフォローしあう環境を整えましょう。

早期発見に注力する

メンタル面のトラブルは、重症化すると会社だけでなく社会復帰しにくいのが現状です。なるべく早期発見できるように力を入れましょう。

ストレスは周りだけでなく、本人も気づきにくいもの。定期的な面談を実施・何かしらのケアを行うことで発見が早くなります。症状が顕著になってから対処するのではなく、早い段階でリフレッシュできるようにするのがおすすめです。

休暇取得を励行する

正社員だけでなく非正規雇用社員にも年休が付与されて久しくなります。企業によっては消化が追いつかず、時効を迎えて権利を消失するところも。業種や時期によっては長期休暇は難しいかもしれませんが、こまめにとりやすい職場では、仕事の疲れもリフレッシュしやすいと言えるでしょう。年休取得率もメンタルヘルスのチェック項目として考えることも大切です。

長期休職者が減ることは安定した人材確保にもつながり、適切な業務分担が可能になります。感情労働を伴う企業は、会社全体でフォローできる体制を整えましょう。